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「わかりやすい英文報告書の作成方法」

 

わかりやすい英文報告書の作成方法を梗概(outline)、段落(paragraph)を重点にして説明します。「英語で書く基本が身につく本」の第10章と第11章の補足になります。

 

英文報告書といっても状況によりいろいろな内容のものがありますが、ここでは私がコンサルタント業務で書いた調査報告書を例に使います。コンサルタント業務の報告書では顧客の求める情報を探し、分析し、整理して顧客に役立つ提案をする、が要点になりますが、この報告書に使ったわかりやすい英文報告書作成のための技術は他の種類の報告書にも応用できると思います。

 

 

わかりやすさの要素

 

報告書が読者にとってわかりやすいためには次のような要素が必要です。これらの要素は日本語の報告書と英語の報告書の両者に共通するものです。

 

1.          読者の求める情報を事前に明確にして、この情報だけに限定して報告書を書く。余計な情報は書かない。

2.          読者の報告書の内容に関する基礎知識に合わせて説明の詳しさを決める。必要以上に詳しい説明はしない。

3.          結論をみちびいた過程を説明し、結論は明確にはっきりと書く。

 

以上は 言うは易く行なうは難し ですが、報告書を書くときに常に自問自答してチェックする必要があります。私のコンサルタント稼業の経験でも上の(1)、(2)の想定が十分でないためにプロジェクトが予定期間以内に終わらず苦労することがあります。

 

英文報告書は日本文報告書の較べて、うえの三点を踏まえて報告書を書く説明技術がよりよく確立していると思います。このような説明技術を理解すれば、英文報告書を作成することがやさしくなります。

 

 

報告書の概略の設定

 

報告書作成の第1段階として報告書に書く問題点(issues)と視野(scope)を仮に設定して、調査を始めます。調査は読者との面接調査、標本調査、文献調査などがあるでしょう。それぞれの調査の結果を短くまとめます。文献調査の場合は短く要点をまとめることと出典の記録をとることが特に大切です。文献を引用するときは文献の要点を自分の言葉で報告書に書くわけなので、長い引用をコピーしていると時間ばかりかかってあまり役にたちません。

 

ある程度の調査結果が集まった段階で報告書の梗概をつくります。梗概は報告書の構成を決めるもので報告書作成の鍵になります。概要の作成にはいろいろな方法がありますが、私は次のような方法を使っています。

 

大きな紙を広げて報告書の問題点をごく短く書き、丸で囲う。それぞれの調査結果をやはり短く書き丸で囲う。問題点と調査結果の関係を線で結び、どのように関連してるか論理関係を視覚的に明らかにする、新たな問題点、興味のある関係を書き込んで丸で囲む。この丸と線で埋まった大きな紙(報告書の全体像)を眺めて報告書の構成を考えていると、時には丸と丸との新しい関係が浮かび上がって新しい発見やインスピレーションがあります。

 

この丸と線の方法はいろいろな名前で呼よばれていますが、わたしはマッピング(mapping)とよんでいます。マッピングの例として私のコンサルタント報告書のためのマッピングを載せておきます。

 

このコンサルタント報告書を概要、段落の例にも使うので、はじめに報告書の背景を説明します。

 

私の住むカナダ アルバータ州は人口が約3百万、面積は日本の約2倍あります。州都エドモントンから北は冬の気候が特に厳しく、面積は日本ほどありますが人口はわずか28万です。しかし森林、天然ガス、石油資源が豊富で、特にオイルサンドいう石油が砂岩に浸透したものの確認埋蔵量は中東の石油に近いといわれています。オイルサンドには露天掘りで掘ったものを砕き化学処理して石油を抽出する方法と、地下のオイルサンド層までパイプを入れ、熱湯で石油を抽出する方法があります。どちらも大規模開発が必要で開発費は通常の石油に較べて高くなります。現在はまだ露天掘りが主体です。露天掘りのオイルサンドを運ぶダンプトラックのタイヤは日本製ですが直径が3メートルぐらいあります。

 

この地域にアルバータ政府の公社である Northern Alberta Development Council (北方アルバータ開発会議)という組織があり、地域の市町村と協力して経済、社会開発の推進をしています。報告書の作成はこの公社から依頼されました。目的は、北方アルバータは少ない人口にもかかわらず、アルバータ経済に多大の貢献をしている、ということを統計を使って明らかにし、民間企業と政府の関心を引いて経済開発を促進しよう、というものです。

 

 

梗概(outline)と見出し(headline)

 

次にのマッピングから梗概を作ります。 マッピングではいろいろな項目が丸と線で多重的に関係していますが、紙にタイプまたは印刷する報告書は一枚一枚紙をめくって内容を読みますから、マッピングの多重的な関係を一元的、直線的な構成に移し変えなくてはなりません。

 

コンピューターを使って読むことを前提とした報告書では項目と項目、映像、音声、図表へのリンクなど、読者とのインタラクティブな関係を使った報告書を作成できます。このような形の報告書がこれから増えると思います。このような報告書をわかりやす書く技術は紙の報告書の技術とは違うと思いますが別の話題としておきます。

 

さて、マッピングから梗概を作成するときには項目の選択と順序、項目の階層構成(大見出し、中見出し、小見出しなど)が大切です。マッピングから一番大切な論理の流れを抽出して梗概を構成します。一般的には論理の流れは次のようになります。

 

1.          報告書の扱う問題は何か。

2.          どのような資料を使い、どのように分析したか。

3.          どのような結果がでたか。

4.          この結果は報告書の対象にどのような意味を持つか。

 

報告書の読者は報告書を読むときに上記のような意識を持っていますから、この読者の意識に対応した構成を持つ報告書が読者にとってわかりやすい報告書になります。

 

梗概は一般的に次のような構成になります。

 

1.          Executive summary

2.          Introduction

3.          Analysis

4.          Conclusion

5.          Appendix

6.          Reference

 

Executive summary は報告書の要約で、20ページを超える報告書ではよくこの要約を報告書につけることを要求されます。もともとは忙しいexecutives (管理職)の人のための要約、という意味です。しかし報告書の一部分で誰でも読めるわけですから、いまはまずこれを読んで報告書の全体像をつかみ、それから報告書の本文を読む、というようになります。Executive summaryは報告書の本文が完成してから最後に書きます。

 

Introductionでは報告書の目的(どのような問題をなぜとりあげたか)問題の分析方法、結論の要点を書きます。introduction も報告書の大半が終わってから書きます。

 

Analysis が報告書の核の部分で、問題点の提出、資料の分析をします。

 

Conclusionでは分析の結果、結果が報告書の読者にどのような意味を持つかの分析、結果の基づいた提案を書きます。

 

Appendixは報告書の本文に入れてないが大切な図表、資料の抜粋などを書きます。

 

Reference は報告書が論文で資料の出典を明確にしなければならないときに書きます。Referenceの作成方法はいろいろな形式があり、それぞれの研究分野でこの形式が決まっていますから、この形式に従います。

 

例:

 

Analysis of the Economic Contribution

of the Northern Alberta Development Council Region

to Alberta and Canada

 

Table of Contents

                

1             Introduction   

 

2             NADC Region’s Contribution to Alberta Exports      

2.1           How Did Alberta's Trade Balance Change?   

2.2           NADC Region’s Contribution to Alberta’s International Exports  

2.3           NADC Region’s Contribution to Alberta’s Interprovincial Exports

2.3.1    Oil and gas exports to other provinces

2.3.2    Agricultural exports to other provinces

 

3             NADC Region’s Contribution to Alberta’s Capital Investment 

3.1           Capital Investment in the NADC Region        

3.2           Investment Prospects for the NADC Region 

 

4             NADC Region’s Contribution to Industrial Supplies

4.1           Materials and Supplies Purchased by Manufacturing Production in the NADC Region          

4.2           Machinery and Equipment Purchased for Investment in the NADC Region             

4.3           Construction Materials and Labour Purchased for Investment in the NADC Region

 

5             NADC Region’s Contribution to Employment Earnings           

 

6             NADC Region’s Contribution to Revenue of Government       

6.1           NADC Region’s Contribution to the Revenue of Municipal Governments

6.2           NADC Region’s Contribution to the Revenue the Government of Alberta  

6.3           NADC Region’s Contribution to the Revenue of the Government of Canada            

 

7             NADC Region’s Relative Economic Contribution to Alberta and Canada

7.1           Comparison of Total Contribution

7.2           Comparison of Per Capita Contribution

7.3           Implications for the NADC Region  

 

Appendix A: Statistical Tables

Appendix B: Data Sources and Methods

 

上の例では次のところが他の部分と項目の書き方と階層構造が違っています。

 

2             NADC Region’s Contribution to Alberta Exports      

2.1           How Did Alberta's Trade Balance Change?   

2.2           NADC Region’s Contribution to Alberta’s International Exports  

2.3           NADC Region’s Contribution to Alberta’s Interprovincial Exports

2.3.1    Oil and gas exports to other provinces

2.3.2    Agricultural exports to other provinces

 

項目の書き方は文でも名詞句でも良いですが、梗概全体として同じ書き方を使います。上の例でもし項目を文で書けば次のようになるでしょう。

 

2             How much did the NADC Region contribute to Alberta’s exports?

2.1           Alberta’s Trade Balance change over the last ten years?

2.2           How much did the NADC Region contribute to Alberta’s international trade?

2.3           How much did the NADC Region contribute to Alberta’s exports to other provinces in Canada?

 

文による梗概の項目は梗概が短く、項目の内容が多岐にわたる場合には項目の内容を説明できるので有効です。しかし上の例のように報告書全体の視野が限られていてその中でいくつか関連した項目を同じ形式で分析するような場合には、名詞句を使用したほうが梗概全体を読みやすくします。

 

2.3はしたに2.3.12.3.2というほかには無いもう一段階下の階層の項目が追加されています。 項目の階層はこの項目を報告書全体の構成の中ででどれだけ細部にわたって記述するかということを示します。2.3.12.3.2は報告書のほかの部分と較べて一段階詳しく記述することをしめしています。特別の理由があるときにはこのようにすることが必要ですが、一般的には項目の階層構造は報告書全体として統一があるようにします。

 

実際の報告書では次のようにしました。

 

2             NADC Region’s Contribution to Alberta Exports      

2.1           Alberta's Trade Balance Change     

2.2           NADC Region’s Contribution to Alberta’s International Exports  

2.3           NADC Region’s Contribution to Alberta’s Interprovincial Exports

 

項目の階層を示す数字の組み合わせはいろいろあります。

 

1             大項目

1.1           中項目

1.1.1    小項目

 

 

I.              大項目

A.             中項目

1.             小項目

 

 

報告書の種類によってはどのような階層の数字の組み合わせが決まっている場合もあります。

 

梗概は読者に報告書全体の構成を示すだけでなく、報告書を書くときにもそれぞれの項目が報告書全体の中でどのような位置を占め、どのくらいの細部まで書くかの指標になります。梗概を作成すれば、報告書をIntroduction から書き始める必要はなく、書きやすい項目から始められます。

 

 

段落 (paragraph)

 

梗概が完成して報告書の構成が決定したら、いよいよ報告書の項目を書き始めます。項目は梗概の始めから書き始める必要はなく、一番書きやすいところから始めるとよいでしょう。

 

項目はいくつかの段落から構成されます。段落は複数の文の集合です。日本語の報告書にも段落はありますが、英語の報告書では段落の構成の方法が日本語よりも確立しています。段落は次のような要素、性質を含んでいなければなりません。

 

1. 段落の内容が一つの題目に統一していること (unity)

 

一つの段落では一つの題目 (topic)、関心(focus)だけを記述します。ある題目から始めて、同じ段落で新しい題目に移ると読者は混乱します。段落は読者にある題目を一番理解しやすい形で一つのかたまりとして伝えるものです。新しい題目は新しい段落で記述します。

 

一つの題目の記述といっても報告書を書く人によって段落の長さは変わります。長い段落でも文と文の関係を明確にすることで読者に統一した内容を伝えることは可能です。ただし傾向としては段落の長さはだんだんと短くなってきています。世の中が忙しくなり、報告書をじっくりと読むから、すばやく内容を把握する、というように変わってきています。短い段落のほうが段落の統一性を保つことがやさしくなりますが、段落と段落の関連をはっきりとさせる必要が生じます。

 

2.段落の内容が首尾一貫していること (coherence)

 

一つの題目について記述している段落でも、内容の書き方が首尾一貫していなくては読者は混乱し、同じ段落を読み返して内容を理解しなくてはなりません。読者が段落を始から終わりまで一回読んだだけで内容が理解できるような書き方をします。

 

このためには段落の文章の構成に規則性を持たせることが役立ちます。規則性を持たせるには次のような方法があります。

 

·             読者がすでに知っていることから始めて、新しいことに移る。

·             一般的なことから始めて、特別なことに移る。

·             特殊な例から始めて、内容を一般的なことに伸ばす。

·             時間的な経緯を追って記述する。

 

また文の書き方の技術としては次のようなことに注意します。

 

·             段落の中で同じ事柄について書くときは同じ名詞を使う。

·             文章の並列構造をつかう。

·             記述の名詞を代名詞で置き換えるときには代名詞が示すものが明確にわかるようにする。離れた文に出てくる名詞は代名詞を使わずに名詞を使う。

·             文と文の論理関係を明確にする副詞、副詞句 (So, therefore, thus, next, etc.)や従属節 (... because A; When A, then .... etc.)を使う。

 

図表を使うことは視覚的に明確な印象を読者にあたえ、また数値で問題の全体像を明確にすることもできます。ただし、報告書を書く人には図表の意味が一目瞭然に思えても、読者にはそうでない場合があります。図表は文で書く内容と対応するようにし、図表の内容、読み方も文で記述する必要があります。

 

3.キーセンテンス(key sentence)

 

キーセンテンス(topic sentence ということもあります)は英文の段落の特徴です。キーセンテンスは段落で取り上げる題目を短く記述したものです。キーセンテンスの無い段落もありますが、キーセンテンスを入れることで読者が段落の内容を把握することが容易になります。キーセンテンスは段落の始め、中途、終わりに置くことができますが、段落の始め、またはそれに近い場所に置くようにすると段落の文章が書きやすくなります。

 

 

段落の例

 

段落の書き方の要点を私の報告書を例にして説明します。悪い例を赤字で添削してあります。

 

2.2           NADC Region’s Contribution to Alberta’s International Exports

 

In this section, we estimate the value of Alberta exports that is originated in the NADC Region1. The NADC Region is a major producer of agricultural products, oil and natural gas, and forest products in the province. These industries in2 Tthe NADC Region is are highly export-oriented and has have been a major contributor to Alberta’s international exports. Since2 Ooil and gas production in the NADC Region is expected to increase in the coming ten years. , Tthe NADC Region will remain as a major driver of Alberta’s international trade.

 

1.          この段落全体がこの項目の導入部になっていますが、段落自体のキーセンスとして1行目を入れました。

 

2.          文と文のつながりをつけて段落全体のcoherenceを向上しました。

 

Since Alberta’s export statistics were available only for the province as a whole., We we estimated the value of exports originated in the NADC Region for agricultural products, oil and natural gas, and forest precuts by applying the NADC Region’s percentage share of production those industries in the NADC Region out of to Alberta’s total exports1. The data used to calculate Tthe NADC Region’s percentage shares were obtained from: of oil and was were obtained from the Department of Alberta Energy, the percentage share of agricultural products was obtained from the Agricultural Census of Canada, and the percentage share of forest products was obtained from the Alberta Forests Products Association.

·             Oil and gas – the Department of Alberta Energy;

·             Agricultural products – the Agricultural Census of Canada, and

·             Forest products – the Forests Products Association of Canada2.

 

1.          一行目をキーセンテンスにしました。

 

2.          箇条書きの並列構造にしました。

 

最後のコメント

 

英文の報告書の構成は、まず梗概で全体像を論理的に明示し、それぞれの項目はキーセンテンスで内容の要点を示す、という多層の論理構造になっています。報告書の多層の論理構造とプレイン・イングリッシュの文体を用いた記述、この二つを練習すれば英文報告書の作成がやさしくなります。